「継ぐ」こと
「家業がないのに実家を継ぐ」ということが長年の疑問だった。
矢鱈と地元に帰ってこいというのも、必要性が感じられず、よく分からないなぁと思っていた。
関東での仕事を辞めて一月以上が経った。
約10年ぶりになる実家での暮らしも、慣れてきたような気がする。
反抗期のない子供だった。
弟ふたりも、特に反抗期らしい反抗期はなかったらしい。
優しい、という訳ではないが、感情を直感的に表現する割には想いを伝えることが下手だ。
なんとなく優等生タイプで、日々のストレスを吐き出せず抱え込む。
母とは合わず、家族は仲良くするものだ、一緒に住むものだという親の価値観とのジレンマに悩まされた。
家族も他人だとは言うが、他人だったら許せることも、母に言われると許せないことが多々ある。
母からしてもそれは同じらしい。
そんなジレンマがあったから、帰るつもりは毛頭なかった。
ただ、自分自身向こうで過ごす間に少しずつ考え方も変わったようで、相も変わらず母とはぶつかるが、ぼちぼちやっている。
ところで冒頭に述べた、「家業がないのに実家を継ぐ」だが、どうやら「墓を守る」ということらしい。
あまりにパッとしないので、僕が死んだら骨は合祀にしようと思った。
そんなことをして向こうであったら絞られることは間違いないが。